Beef CREATOR

2023.02.24
ビーフクリエイター図鑑

「ハンバーガー=肉料理」を伝道し、業界にミシュラン獲得の潮流を。ブロック肉から包丁技でパティを創りだす情熱と孤高のクオリティ。日米首脳会談の食事としても話題に|MUNCH’S BURGER SHACK

「ビーフクリエイター図鑑」とは、牛肉の価値を高めるためのブランディングに熱意を注ぐ外食産業、流通産業の各業種業態の企業や人物(=ビーフクリエイター)を取材し、その考え方を業界内の方々へ共有することで、牛肉のさらなる価値向上の底上げを共有するためのノンフィクションコンテンツ。

今回はアメリカ合衆国のトランプ元大統領が来日した際に召し上がったことでも一躍世間を賑わせ、徹底的にこだわり抜いた“自家製”で作り上げる至極のハンバーガー「MUNCH’S BURGER SHACK」様を取材させていただきました。

アメリカ生まれ日本育ち、本場を超えるハンバーガーの原点

東京芝公園。大通りを抜け、オフィスビルや住宅地が入り組んで並ぶ静かな場所に、一際目立つ長蛇の列。デリバリー配達員の出入りも激しく、お客様の中には地方から訪れている方の姿も見受けられた。そんな大人気店の「マンチズバーガーシャック」だが、店舗営業を開始する前はハンバーガー専門の移動販売、屋台営業が原点だった。

―編集部:ハンバーガー専門の移動販売を始めたのは、どのようなきっかけだったのでしょうか?

柳澤さん:最初は妻が、友達と移動販売を始めたいと言ったのがきっかけです。友達同士だと上手くいかないこともあると思ったので、「じゃあ、僕も一緒にやるよ」という感じで2006年に始まりました。

編集部:昔から飲食関係の経営をしたいというお気持ちはあったのですか?

柳澤さん:そこまで強い気持ちがあった訳ではないのですが、人に雇われたり、サラリーマン気質じゃなかったりするのは自覚していたので、自分で何かやってみたいという漠然とした思いはあったと思います。
高校卒業後、26歳までクラブでバンド活動をしながら精肉店でも働いていました。当時はハンバーガー店を経営するためにお肉について学びたいということが動機ではなく、夜のバンド活動をするために定時で終わる仕事に就いていたというのが理由でした。奇遇にも、精肉店での経験や知識がいまの仕事にとても役に立つことになりました。

幼い頃はじっとしていることができない、飽きっぽい性格だったと語る柳澤代表。取材を横で見守られていた奥様からは、「出会った頃は本当にガキ大将のようだった」という仲睦まじい掛け合いが。店内スタッフの方々の元気で明るく温かい雰囲気は、お二人の温厚な人柄が反映されているように思えた。

写真右:代表の柳澤 裕さん 左:奥様の柳澤 裕子さん

一切の妥協を許さない、クオリティファースト

―編集部:ゼロからスタートされた移動販売。待ち受けていた壁などはございましたか?

柳澤さん:初めの頃は1日に10食程度と、思っていたよりも売れなくて、とても苦戦したことを覚えています。
移動販売って、お昼だけ営業して終了していたり、イベント時には必然的に短時間で一気に売れたりというイメージがあったのですが、実際蓋を開けてみると全くそんな考えは通用しなくて・・・
当時はまだ移動販売するスタイルが確立されておらず、想像以上に過酷な仕事でイメージと現実とのギャップを痛感しました。

幸いにもハンバーガーを専門としている移動販売が少なかったので、専門性を活かすためにもお客様に一目で何屋なのか理解していただけるよう、看板の出し方を工夫するなど試行錯誤しました。
中でも一番頭を抱えたのは、クオリティとスピードを重視したオペレーションの構築です。限られた時間の中で、いかにお客様を待たせずに最高の状態で提供するか。例えば温めて盛り付けるだけのメニューであれば比較的容易に調理時間を短縮できますが、注文が入ってから調理を始めるハンバーガーですと、短縮できる調理工程がほとんどありませんでした。あらかじめ作り置きしてスピーディーに提供することも可能ですが、そうするとバンズにソースが染み込んでしまったり、パティの熱で野菜がしなびて食感や風味が変わってしまったりする。でも“絶対に出来立てのおいしさを提供する”という考えは一ミリも譲れなかったので、クオリティは一切の妥協を許しませんでした。移動販売という立場であっても、店舗のハンバーガー屋さんと同じレベルのクオリティで提供したいという思いが強かったです。

多種多様な場所での販売を経て身につけた“ニーズ感覚”

―編集部:移動販売はどのような場所で行なっていたのですか?

柳澤さん:初めの頃は埼玉をメインに移動販売を行なっていたのですが、販売できる場所が限られていたので、県の総合支援センターに行ってよく相談をしていました。県の運営しているプールで販売させていただけるようなラッキーなお話をいただけるなど、ありがたい出来事が多かったです。

大きな目標の一つであった、浦和レッズの屋台での出店や、ネオ屋台村での出店を経てお客様からの認知度も徐々に上がっていきました。その後、埼玉スタジアム、幕張メッセなど多数のイベントへ参加させていただき知名度を高めた後、店頭販売へシフトチェンジしました。

柳澤さん:いろんな場所で移動販売を行なっていると、販売する場所によってお客様の層や相場などが全く異なるので、エリアごとのリアルなニーズ感覚が自然と身につきました。店舗を構える際のエリア選定にも、実際に移動販売時に感じた経験を活かしています。
田町の駅前で何度か移動販売をさせていただいたことがあったのですが、想像以上にかなり手応えが良かったのを覚えています。新しいエリアで初めて販売する時って20食ほどしか売れなくて、そこからどんどんと販売数を伸ばしていくのですが、田町駅前では初っ端から80食近く売れました。働く方だけでなく、外国人のお客様も多かったのでマンチズバーガーとうまくマッチしたのだと思います。港区の中心部から少し外れた穏やかな場所で、家賃相場的にも「店舗販売をするならここしかない!」と思い、初店舗、現在の店舗ともに芝エリアにお店を構えました。

約5年の歳月をかけた決意と覚悟「やるからには、全て自己資金で」

―編集部:実際に店舗開業計画をされた際の1番のご苦労はどんなことでしたか?

柳澤さん:金銭面ですね。店舗営業ではなく移動販売からスタートしたのも、初期費用が安く済むからです。移動販売を始める際には金融機関からの融資も受けましたが、その経験を通して融資を受けるのではなく全て自費の方が良いと痛感しました。融資を受けて移動販売から店舗営業をされた先輩達の姿を見ていてもかなり大変そうで。
「やるからには、全て自己資金で全部やってやろう」と決意と覚悟を決め、約5年の歳月をかけて開業準備資金1000万円を準備、2011年1月に初店舗を出店いたしました。

店舗開業と同時にメニューラインナップの見直しも行いました。移動販売時はハンバーガーにポテト、ちょっとしたサイドメニューくらいだったのですが、店舗販売ではハンバーガーのラインナップはもちろんのこと、サラダやスープ、デザートなどを増やして、サイドメニューやトッピングメニューの選択肢を豊富に用意しました。

現在の芝公園本店では、5種類のサラダに2種類の本格的なスープ、自家製のベーコンやローストビーフ、フライドチキン、食べ応え抜群なホットファジサンデーなど、全て書ききれないほどトッピング含め多様なラインナップが用意されている。

肉本来の味と食感を最大限に引き出すために辿り着いた究極奥義のパティとは?

「ハンバーガーの主役はお肉だと思う。」と語る柳澤さん。ハンバーガーの命であるパティに込められた徹底したこだわりについてお話を伺った。

―編集部:移動販売時代からブロックのお肉を一つ一つ手で刻んでパティにされていると伺いましたが、最高のパティが完成されるまでの道のりや経緯をお聞かせください。

柳澤さん:移動販売時代の初期はひき肉を使用していたのですが、最高のパティを作り出すための研究しているうちにより肉感を感じることのできる“チョップ”という方法を覚え、ブロックのお肉を一つ一つ包丁で刻みパティにする調理法を取り入れました。

柳澤さん:塊肉の状態から包丁で解体することで、肉本来の味と食感を最大限に引き出すことができます。

牛脂を足したりせずに、牛肉100%で作られている極上のパティ。味はもちろんのこと、食感にも影響を及ぼす余分な油や筋膜などを隅々まで確認しながら切り取る。パティに不要なものは全て切り除くため、使用できるお肉は全体の70%程だそう。水分を飛ばすために一度軽く寝かせた後、塊肉から包丁で細かく切る作業が始まる。刻まれたお肉は、鮮度を保つため細心の注意を払いながら氷の上で十分に練り込み、ようやくグラムを計りながらプレス機にかけられ、パティとして形になっていく。コロナの影響で時短営業をしている現在でも、1日200枚程度、休日には300枚を超えるほどのパティを一つ一つ手作業で作り上げているのだそう。パティに命を懸け、全身全霊を捧げているからこそ成せるプロの凄技だ。

マンチズバーガーシャック様の公式YouTubeチャンネルで、パティ作りの一部始終が惜しみなく公開されているので是非ともご覧いただきたい。

編集部:下準備だけでも沢山こだわりが詰まっているパティですが、焼き方にもこだわりはあるのでしょうか?

柳澤さん:280〜300度程の高温の鉄板で一定温度を維持しながら焼き上げているのですが、おそらく普通のハンバーガー店さんより温度が高いと思います。お肉に火が通るとどうしても少し硬くなってしますが、一定の温度で一気に焼き上げることで表面はカリッと中はジューシーに、ステーキに近い仕上がりにすることができます。当店ではお客様のお好みに合わせて焼き加減を選択していただくことができますが、1番のおすすめはミディアムレアです。焼き加減の選択も移動販売時代から引き継いでいます。

高温度の鉄板でミディアムレアに焼き上げられるパティ

溢れ出る肉汁、たっぷり満足感なのに“もたれ”を知らない至極のハンバーガー

―編集部:パティの原料である牛肉は、どのように選定しているのですか?

柳澤さん:移動販売時代には、自分が働いていた精肉店にオージービーフなどを卸していただいていたのですが、より味が濃く旨みの強いお肉をずっと探していました。一般の精肉店では私の求めているお肉はなかなか手に入らず、卸売業者さんへ直接相談をしてアドバイスをいただいた結果、米国産「National Beef(ナショナルビーフ)」というブランドに辿り着きました。しばらくNational Beefのアンガスビーフを使用していたのですが、2021年の末頃に同じく米国産「Iowa Premium(アイオワプレミアム)」という、従来より更に甘みがあり旨みの強い柔らかなお肉をご紹介いただき現在も使用しております。

「Iowa Premium」ブランドは輸入牛格付けの中でも最上級ランクである「プライム」グレードの発生率が高く、一般的なUSビーフからはプライムグレードが約7%しか発生しないのに対して「Iowa Premium」は3倍弱の約20%も発生。全米No.1コーン産地で育まれた高品質な牛肉で、仔牛の早い段階から良質なコーンを豊富に給餌されているため程よいサシが入り、旨みが強いのが特徴だそう。

柳澤さん:程よく入っているサシも和牛に比べてIowaは重たくなく、赤みの旨みも非常に強いです。サシと赤みのバランスが非常にいいので、脂身が苦手なお客様にももたれを感じずに召し上がっていただけます。

ずっしりとした重みがあり、食べ応えも抜群なハンバーガー。編集スタッフも実際に頂いたのだが、溢れ出るジュージーな肉汁に、外はカリッと中はミディアムレア、噛み締めるごとに強まるお肉本来の旨みの詰まった味わい。まさにステーキのような極上のパティだ。食べ終わった後の満足感はしっかりとあるのにも関わらず、もたれ感やしつこさが一切無いことに驚いた。一般的に人々が抱いている「ハンバーガー=パン料理」ではなく「ハンバーガー=肉料理」であることを証明する至極のハンバーガーだ。

柳澤さん:お肉の味を最大限に楽しんでいただくために、素材の組み方も研究しました。下からバンズのヒール、ハニーマスタード、パティ、チーズやベーコンなどの具材、トマト、レタス、オニオン、ピクルス、マヨネーズ、最後にバンズのクラウン。順番と厚みを考えて組み立てております。パティを最下層にすることで、舌に近くなり旨みをより感じることができます。召し上がる際に食感が出るよう、レタスも層になるよう折りたたんで入れ込んでいます。

5日間かけて燻したスモークベーコンを使用した「自家製ベーコンエッグチーズバーガー」

編集部:6:4のバンズと拝見したのですが、この割合の意味はなんでしょうか?

柳澤さん:バンズの下、ヒール部分を6、上のクラウンを4の割合にしているのですが、お肉から溢れ出る肉汁を受け止めるためにヒールの割合を多くしています。下部分の割合が多いことで、ダブルパティの際にも沈んで形が崩れることなく受け止めることができます。バンズはレストランやシェフの方からも絶大な信頼を得ているパン業界の盟主「峰屋」さんにレシピを持ち込んでマンチズバーガーシャックオリジナルの特注品をつくっていただいています。

オーナーが語るハンバーガーの命である「パティ」をはじめ、マンチズバーガーシャックでは“自家製”に徹底してこだわり、パティの味を引き立たせるソース、スモークベーコン、付け合わせのポテトまで全てお店で一つ一つお店で手作りされている。生の芋からお店で作られている付け合わせのポテトは、厚みのあるポテト特有のパサパサ感がなく、素材の味も存分に引き出され、冷めてしまってもカリッとしており最後まで美味しく味わうことができる。

情熱と孤高の日本育ちのハンバーガーが、本場アメリカの大統領を唸らせた!?

―編集部:アメリカ合衆国のトランプ元大統領が来日の際に安倍晋三元首相との会食でマンチズバーガーが振る舞われたことで大きな話題となりましたが、どのような経緯だったのでしょうか?

柳澤さん:突然、外務省の首席事務官の方がいらっしゃって、いついつにトランプ元大統領が来日されるので、その際に安倍晋三元首相とのビジネスランチの場にランチメニューとして提供したいのですが可能ですか?と聞かれました。あまりに突然のことで何が何だか分からず、もしかしたら話が流れてしまうかもと現実的に受け止められませんでした(笑)何度か事前に関係者の方がいらっしゃってくださっていたようで、「アメリカ牛を使っている料理」というリクエストのおもてなしに、マンチズバーガーシャックが選出されたようです。

トランプ元大統領が実際に召し上がった「PRESIDENT TRUMP SET」ハンバーガーはコルビージャックチーズバーガー

編集部:トランプ元大統領からはどのようなお言葉をいただいたのでしょうか?

柳澤さん:本当は直接お会いしてお話しする予定ではなかったのですが、急遽「本日のシェフです」とご紹介をいただくこととなりました。元大統領が握手をしてくださり「very good! very good!」と言ってくださいました。

アメリカ合衆国のトランプ元大統領と日本の安倍晋三元首相の昼食会の様子

いまやハンバーガー愛好家にとって名高い「MUNCH’S BURGER SHACK」には、アナウンサー、女優、お笑い芸人の方をはじめとした芸能関係者や、スポーツ業界の方など幅広い業界の著名人が訪れる。取材時には大きなキャリーケースを持った遠方のお客様の姿も見受けられた。口コミを見ていらっしゃる方や、一度食べてとても美味しかった為、知人を連れてきてくださったというお客様も多いようだ。店名でもある“マンチズ”は“やみつき”を意味するスラングとのこと。言葉の通り、一度食べれば虜になり、やみつきになること間違いなしだ。

業界の全体の格上げに尽力。目指すはミシュランガイド!?

―編集部:快進撃を続けるマンチズバーガーシャック様ですが、今後の展望や目標についてお聞かせください。

柳澤さん:店舗の目標で言いますと、マンチズバーガーシャックよりも少しカジュアルな店舗を作りたいです。現店舗は、私のこだわりを極限まで詰め込んでおり少し職人気質すぎるので、若いスタッフでも運営できるようなセカンドライン的店舗ができたらいいなと思っています。今働いてくれているスタッフたちもハンバーガーが好きな人や、マンチズバーガーシャックを食べて美味しさに感動して入ってくれた人、いつかは自分でもハンバーガー店を経営したいという人が多いので、ハンバーガーに対する情熱を持った若いスタッフの人たちが活躍できる店舗を増やしていきたいです。

柳澤さん:大きな目標で言いますと、ハンバーガー業界全体の格上げです。ミシュランガイドには、カレーやピッツァ、お好み焼きや餃子なども登録されているのですが、悲しいことにハンバーガーはお店の掲載はもちろん、カテゴリー認定もされていません。日本ではまだ“ハンバーガー”と言うと“グルメバーガー”ではなく、 “ファストフード”のイメージが根強いと言うこともあるのだろうと感じています。うちのお店に注目をいただくことはもちろん嬉しいのですが、他店様であってもミシュランガイドにハンバーガー店が掲載させるようになることは、業界全体の格上げとして大切なことだと意識をしています。

ハンバーガー=グルメバーガー、肉料理の一つとして多くの方に認知していただけるよう業界全体を賑やかに盛り上げて、格上げに尽力できればと考えています。初めてマンチズバーガーシャックを召し上がったお客様からいただく言葉の中で、「ハンバーガーのイメージが変わった」と驚きの声をいただくことがあるのですが、私共からすると非常に嬉しい言葉です。“ラーメンフリーク”が存在し、コアなラーメンファンの方、食事メニューの選択肢の一つとして気軽に食べる方と幅広いお客様の層で賑わうラーメン業界のように、ハンバーガーも国民食として浸透するような時代を作っていきたい。そう考えています。

MUNCH’S BURGER SHACK 芝公園本店
所在地:〒105-0014 東京都港区芝2丁目26−1 1F・2F I・SMARTビル
電話番号:03-6435-3166
メニュー:https://munchs.jp/menu.html
公式HP:https://munchs.jp/
公式オンラインショップ:https://munchsburger.eeat.jp/
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取材・文章/渡辺恵伶奈(Beef CREATOR 編集部) 構成/毛利努(MORRIS STRATEGY & DESIGN CONSULTS,LLC.