Beef CREATOR

2023.03.31
レッドオーシャンの賢者たち

世界38カ国約600店舗を展開するハンバーガーフランチャイズ、日本1号店はクラシックとモダンなハンバーガー2つのアプローチが成功の鍵|Wayback Burgers 表参道店 島村店長

レッドオーシャンの賢者たちとは。新型コロナ感染症による消費低迷によって、絶望の淵に立たされた業種、企業の責任者たちは現場でどのような指揮をとり、最悪の事態を免れられたのか?またその経験により、得た強さや、ノウハウはどのようなものだったのか?逆に、コロナ禍によって、突然の需要が訪れた業種、企業の責任者はどのように立ち回ることで、そのチャンスをものにできたのか?それぞれの状況と立場で問題を乗り越えた責任者(=賢者)のコロナ禍での経験、ケーススタディをしっかりと振り返り、知の共有を行うことで、競争の激しいレッドオーシャンでの勝利を掴むヒントを見出せるナレッジコンテンツです。

今回はアジア1号店が2022年3月に表参道に上陸し、オープン当初から店長として現場を仕切りコロナ禍を乗り越えてきた賢者、Wayback Burgers表参道店の島村店長にお話をお伺いしました。

全米で最も急成長しているハンバーガーフランチャイズWayback Burgersとは!?

Wayback Burgers(ウェイバックバーガーズ)とは、1991年にアメリカのデラウェア州ニューアークで「Jake’s Hamburgaers(ジェイクスハンバーガーズ)」という名前で創業。1991年から2008年まで約17年かけて10店舗のフランチャイズ店を展開し、2009年に大規模な成長を遂げブランド名を「Jake’s Wayback burgaers(ジェイクスウェイバックハンバーガーズ)」に変更。以来、コネチカット州に本社を置き30年以上もの歴史をもつハンバーガーフランチャイズ店です。今では、全米で約160店舗、世界38ヶ国にFC契約ベースで約600店舗を展開し「Wayback Burgers」の名で知られる様になりました。Wayback(ウェイバック)は英語で「昔に戻る」を意味し、名前の意味通りハンバーガーを昔ながらの手作業で調理しています。これまでのファストフードの型にはまらない「本場アメリカの昔に戻る」ような、新しいコンセプトから生み出されたグルメバーガーを提供しています。

表参道店オープン2週間前に入社しアジア初の店舗店長に抜擢

―編集部:店長になられるまでのきっかけを教えてください。

島村店長:私の経歴から申しますと前職では、和食レストラン店の店長を務めておりました。そこでは、大体客単価1万円程のカジュアルな懐石料理を提供しておりましたが、調理の経験はありませんでした。弊社には、元々アシスタントマネージャーとして入社しましたが、当時店長の予定であった者が新規事業の方へ異動することになり私が後を継いで、店長を務めることに。私が入社したのは、表参道店のオープン2週間前であり、フラッグシップの店長としてWayback Burgersを全国に、アジアに広げていく大きなプロジェクトを一任された嬉しさと、重大な責任を感じました。

―編集部:コロナ禍のローンチでは、どの様なご苦労がございましたか?

島村店長:まずオープン準備中に、コロナで半導体が不足している事から必要な機材が手に入りませんでした。食材も同様で、特にポテトを安定供給していくことが難しく、様々なメーカーさんからポテトを調達し種類を増やすなどして対応しました。また、お客様が外食から中食へと移りつつある為、来店人数が減る事は想定できていたのですが、スタッフのコロナ感染による人材不足という点においては想定外の出来事でした。コロナ感染後1週間の療養期間中、シフトの穴を埋める為にスタッフ同士で声を掛け合い協力して乗り越えることができました。弊社ではアルバイトの求人を大々的に募集しておらず、基本的にスタッフの紹介で入ってもらう事が多いです。その為スタッフが、楽しんで働ける満足度の高い環境である事もコロナ禍の人材不足解消に繋がったと思います。

中でも苦戦したのはプレオープンの企画です。外出自粛や営業時間短縮が続く中、人を集めて良いのか、密集して食事をするイベントを開いて良いのかとても悩みました。結果イベントは関係者のみで開催し、一般のお客様向けのプレオープンイベントは開催しませんでした。その為オープン当初の客足は少なく、コロナの影響をダイレクトに受けました。

コロナ禍での第1号店ローンチで課題を乗り越えた解決策とは

―編集部:コロナ禍でお店を継続していく為の課題解決策はどういったものだったのでしょうか?

島村店長:前述した様に店舗広告をうまく打ち出せていない部分を強化していきました。1つ目は、スマートフォンやパソコンでのブラウザ検索やマップアプリ上でのキーワード検索にヒットする様「Googleビジネスプロフィール」を活用し店舗来店を促進していきました。ローカルビジネスの情報を無料で掲載できるGoogleビジネスプロフィールには、店舗の正しい情報や充実した写真を掲載する事で集客力を高め、昨年10月頃から年末にかけて常連のお客様が増え、店舗の認知度が上がっていったと実感しております。ご来店いただいたお客様の口コミも、店舗運営の改善に繋がりますし、インサイト機能によってお客様の行動データが分かり集客の参考にも繋がりました。

2つ目は、SNSマーケティングです。1つ目とも重なる部分はあるのですが、SNSで「#表参道ランチ」や「#東京グルメ」などと検索して来店してくださる若年層の方が多い為、我々は特にInstagramに注力しております。他のハンバーガーフランチャイズ店ではあまり取り組まれていない、敢えてプロっぽくない素人感のある写真や調理風景など裏側を掲載することで、実際の商品とギャップがないリアルな写真や動画を掲載しています。投稿頻度も週に3回はアップしており、おしゃれすぎない親近感があるSNSのアカウントでPR活動に努めております。

イベントでのフードケータリング提供も行い、Wayback Burgersの認知度を上げる活動に取り組んでおります。

島村店長:昨年2022年9月に開催された「東京ガールズコレクション2022AW」ではバックステージにて、ご出演者様、関係者様向けのフードケータリングを提供させていただきました。
店舗で販売している肉好き必見の定番メニュー「クラシックバーガー」をはじめ、アメリカ・カリフォルニア州で開催された大規模なヴィーガンイベントで提供され一躍話題になった「グリルドマッシュルームNEXTバーガー」、Dr. Foods社が1年半の期間を経て開発した“植物性フォアグラ”を使用している「NEXTフォアグラバーガー」の3種類を、TGC専用の特別限定メニューとして特注パティを使用したミニバーガーでご用意させていただきました。

ファッションショーの現場に、アメリカの人気ハンバーガーチェーンがケータリングとして参加するという異例の出来事に、ご出演者や関係者の皆様もご興味を持ってくださりました。大人気モデルや芸能業界の関係者などトレンドに敏感な方々の反応がよく、お客様の温度感をリアルに体感することができました。その後も、芸能関係の方の来店が増え、お客様やSNSでも話題となり、テレビなどの取材も増えましたので、機会があれば今後もイベント出店など新たなチャレンジに取り組んで参りたいと考えております。

―編集部:現在広報活動に注力されているとのことですが、他にも抱えている問題や課題などございましたらお聞かせいただけますか?

島村店長:まずはディナーの売上をもう少し伸ばしたいと考えております。店舗がある表参道の通りは国内外問わず人が集まる場所であり、特に土日の人通りがとても多く話題になりやすい場所です。表参道にお越しになる方の多くは日中お買い物をされて、夕方にはお帰りになってしまうので、夜の人通りが少なく新宿や有楽町の様にサラリーマンが仕事帰りにふらっと寄ってお酒を飲んだり食事をされる方は比較的少ないです。また、表参道でディナーをされる方の多くは目的来店の場合が多くあらかじめお店を予約している場合が多いと感じております。その為、ディナータイムにどの様な目的を持ってWayback Burgersへ来店していただけるのかは、課題の1つであります。

島村店長:店内は様々なお客様のニーズに応えられる環境を整えております。例えばペットと一緒にお食事ができる開放的なテラス席もあれば、アルコール類の提供もしておりますので、ペットのお散歩がてらや、ちょっとした飲み会の場として使っていただくことも可能です。Wi-Fiや電源のコンセント、USBポートも完備しておりますのでリモートでお仕事をされる方やお打ち合わせなど、カフェの様にご利用していただくことも可能です。実際にご利用されるお客様の層としては、ありがたいことに、おひとり様からグループのお客様など老若男女問わず幅広いお客様にご利用いただいております。春を迎え暖かくなってきましたので、テラス席でお食事をしていただけるパーティープランや、アメリカ本社と相談してサイドメニューの充実を図りランチのみならずディナーも満席になる様な店舗作りに注力しております。

―編集部:長引くコロナによって大きな打撃を受けた飲食・外食業界。逆風の中でも市場規模(売上)が2022年に7000億円以上に達したハンバーガー業界。コロナ前の2019年と比べ26%増という驚異的な成長を続けるが、大手飲食チェーンの大量参入による店舗乱立で競争が激化。国内のハンバーガー市場は飽和状態だと言われている昨今ですが、島村店長にとってレッドオーシャンでの勝利とはどのようなものでしょうか?

島村店長:私は利益が出るほどの売上を出し、店舗として何十年と継続していくことが勝利であると考えます。本社があるアメリカコネチカット州では30年以上もの歴史を築いており、その基盤は今後揺るぎないものであると考えています。我々もアジア1号店のある日本で、全米で認められたWayback Burgersのファンを増やすことは必須条件であると考えていますので、お客様のニーズに合った商品・環境でファンの方を増やしていきたいと考えております。

―編集部:ハンバーガー店が増え続けている中、他の店舗との差別化はどのように図られていますか?

島村店長:フランチャイズの店舗ですので、自由に変えることができない制約がありますが「植物性」や「ヴィーガン」を意識したメニューは弊社のセリングポイントであります。植物性タンパク質の代替肉を普及するフードテックベンチャー企業の「NEXT MEATS」社とコラボした「NEXTシリーズ」は、特別に改良した代替肉パティと、ほうれん草を練り込んだバンズを使用した、食べ応えがある肉に近い旨みと食感が好評のハンバーガーです。更に、大豆が主原料の代替シーフード「NEXTツナ」を使用した「ネクストツナサラダ」やオーツ麦が主原料の「ネクストミルク」も販売しており、これまでカロリーや健康面でハンバーガーを控えられていた方やヴィーガンの方でも召し上がっていただける日本独自の植物性のハンバーガーで他店との差別化を図っております。

島村店長:また、Wayback Burgersでは通常のハンバーガーの様に成形パティをそのまま焼くのではなく、全てのハンバーガーに100%ビーフの挽き肉を使用し、独自技術を利用した専用設計のプレスを使い、注文が入ってから人の手で1つずつグリルの上で押し広げながら焼いています。そうする事で肉本来の旨みをパティに閉じ込める、手作業にこだわったハンバーガーを提供しております。本場アメリカでも大人気のミルクシェイクも、注文が入ってから、アイスクリームを1つずつ掬ってミルクを注いで作り、古き良きアメリカの手法を忠実に再現した、他社とは違う商品が当店の販売訴求点だと考えております。

定番メニューの「クラシックバーガー」
milk Shake「CARAMEL」

―編集部:本場アメリカの味を忠実に再現したハンバーガーと、完全植物性のヴィーガンハンバーガーという2つの柱でハンバーガー業界のレッドオーシャンに挑まれるWayback Burgers。島村店長がお考えになる今後の展望についてお聞かせください。

島村店長:今後は全国に出店していきアジア各国に広めていくことが目標です。インバウンドのお客様が、「自分の国にもあるよね」と言っていただける様、認知度を上げていきたいと考えております。実際に、日本のお客様からも「次は大阪に出店してほしい」「出張先でも食べたい」などというお声もいただいているので、どこに行ってもWayback Burgersがある様、店舗数を増やすことに尽力して参りたいと思います。

Wayback Burgers
所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4丁目11-6 表参道千代田ビル 2F
電話:03-5843-1556
公式HP:https://wb-burgers.jp/
公式Twitter:https://mobile.twitter.com/waybackjapan
公式Instagram:https://www.instagram.com/waybackburgersjapan/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@waybackburgersjapan

文章/小関咲穂(Beef CREATOR 編集部) 取材/渡辺恵伶奈(Beef CREATOR 編集部)構成/毛利努(MORRIS STRATEGY & DESIGN CONSULTS,LLC.